
「日々の生活」に欠かせないもの、そして一番のお楽しみはやはりお食事です。今日は洗心福祉会でのお食事について栄養士のお二人に話しを聞きました。
編集 「では、お二人のお仕事内容を教えて下さい。」
伊藤 「はい、私たちは主に津市高茶屋にある事業所の献立を担当しています。中でも通所事業を担当しています。」
編集 「利用される方にとってお食事というのは大きな楽しみの一つだと思うのですが、また、お年を取るとカロリー制限など献立を立てるのは大変ですか?」
伊藤 「私たちが担当しているのは通所事業なので来園されるご利用者様のお昼ご飯を主に考えます。入所施設などになると朝昼晩の3食でバランスの取れた食事を考えるのですが、私たちが考える通所事業の献立はバランスが取れながらも満足してもらえるお食事にしようと一球入魂しています。」
若畑 「一食入魂だね(笑)」
編集 「それにしても30食分考えるのは大変ですよね」
伊藤 「実は、シルバーケア豊壽園の通所事業ではサイクル方式というのを採用していまして、献立は15食~17食分考えるんです。一般的なご家庭でもそうかもしれませんが、30食毎日全く異なるメニューと食材ということはありませんよね。私たちもシーズンごとに選りすぐりのメニューを15食~17食考えるわけです。」
編集 「提供する高齢者を意識して献立を立てるのですか?」
伊藤 「高齢者だから柔らかいもの、というふうな意識はほとんどしてなくて・・献立はおよそ2ヶ月先のことを考えるので…一番大切にしていることは「イメージ」ですね。」
編集 「イメージというと?」
伊藤 「2ヶ月先のことを考えていくので、例えば今は10月ですが、12月から始まる冬メニューのことを考えます。今年の冬は寒いんだろうかとか、寒そうな中庭の景色を見ながら何が食べたいのかな?なんてイメージしながら…」若畑 「イメージしながら、結局最期は自分たちが食べたいものになっちゃうんですけど(笑)」
伊藤 「そうだね、それと高齢者っぽいお食事っていうのもあまり意識はしていないっていうのは、他の施設でペースト食を食べていた方がここのお食事を見て、「私もあれが食べたいわ」って言われて固形食の超キザミにして今では常食を普通に食べられている方も結構いますよ。」
編集 「なるほど、ではご利用者様に人気のメニューを教えて下さい」
若畑 「はい。ご利用者様に人気のあるメニューは毎年その季節になると絶対外せない定番メニューになっています。冬場なら「肉じゃが定食」「さばのみそ煮定食」「ぶりてりセット」オールシーズン人気なのは「茶碗蒸し」「カレーランチ」「牛丼」「ちらしずし御膳」でこれらは季節になると必ず入れますし、牛丼なんて1年中入ってます。」
伊藤 「そうそう、牛丼は何故か人気があるしその分材料も厳選してるもんね。」
若畑 「牛丼のお肉を決めるときはいろいろ試食したもんね。値段の高いお肉でも牛丼向きなのとそうでないのがあって、やっぱりお肉は材料の良し悪しで左右…じゃなくて上下されますね。」
伊藤 「あ、そういえば、夏にやった『冷しゃぶランチ』の牛肉は超高級だったよね。」
若畑 「うん!ここでは言えないくらい高級だったよね。」
伊藤 「でも、使っちゃったね。」
若畑 「うん、使っちゃったね。ほかのシーズンで補えばいいからって言われたよね。」
伊藤 「うん。それ内緒ね。」
編集 「なるほど、材料の決め方も難しいのですね。定番メニュー以外はどんなメニューがありますか?」
伊藤 「定番メニューに対して自分たちでは『冒険メニュー』って呼んでいるんですけど、ご利用者様が食べてみたいっていうものとかご利用者様にとってめずらしいものを『いかがですか』ってお出しする献立です。韓国風の料理を楽しんでもらおうと、ビビンバを出そうということになって… 『ヨン様セット』って名付けたんですが、ところがご利用者様のほとんどはビビンバの食べ方を知らなくって、『混ぜるのかこれ?』って言われてあんまり評判が良くなかったんです。
若畑 「『中華セット』っていうのもありました。チャーハンと冷し中華とシュウマイと蒸し餃子で、中華料理の人気アイテムを少しずつお皿にのせて楽しんでもらおうと思ったら、全部合わせるとすごい量になっちゃって、食べきれないって…。いわゆる『モリモリ!』っていう状態ですね。」
伊藤 「炭水化物攻撃とも呼ばれました…。男性のご利用者様は喜んでいらしたんですけどね。」
若畑 「今では定番メニューになりつつあるけど当初は冒険メニューだったものもあるよね。」
伊藤 「そうそう、失敗ばかりじゃありませんよ。」
若畑 「『塩釜焼きセット』というのがありまして、塩を卵白で固めたものでお魚を包んで焼くんです。それを食べる直前にご利用者様にこん棒で割っていただくんです。この食べる前の作業が結構大変で…。」
伊藤 「塩が飛び散って大変だよね。」
若畑 「そう、味が冒険じゃなくて食べる前に冒険しなきゃいけないんだよね。でも、今では春先になると『塩釜まだ?』って楽しみにされてます。」
伊藤 「こういう感じで失敗しながら人気メニューに昇格していくんですね。冒険メニューは。」
若畑 「そういえば『1人鍋御膳』をやったとき、1人用の鍋に火をつける固形燃料が人数分足らなくなって職員が買いに走ったこともあったよね。」伊藤 「あったねー。お食事前に冒険に出ちゃったんだよね…。職員が。」
編集 「今日の献立を見てたら『ご当地メニュー』とありましたよ。」
若畑 「そうなんです。おやつなどは地方の名産おやつをお出しするってことはよくあるのですが、献立ごとご当地メニューをやってみようということになりまして…。」
伊藤 「地元三重県では『伊勢うどん』です。県外の方はあの汁が少なくて具がなくて太いうどんが入ってる…とあまり良いイメージではないかもしれませんが、これが非常に評判が良くて。やっぱり地元だからですかね。」
若畑 「お隣の名古屋からは『ひつまぶし』『天むす』『さくらういろう』『きしめん』などです。ちなみに天むすは実は津市が発祥で、更に津市というところは日本で最もうなぎ屋さんが多い市なのです。…ということを言わないときっと後で誰かに指摘されますので。」
伊藤 「だけどひつまぶしの最期にだし汁をかけてお茶漬けにする食べ方は誰もしませんでした。両方楽しんでいただきたかったのですが。」若畑 「そうそう、その食べ方は最近名古屋の方から輸入されたのかも。」
伊藤 「あと岐阜からは『ほう葉焼き』」
若畑 「沖縄から『ゴーヤチャンプル』」
伊藤 「山形から『芋汁とさくらんぼ』今はこんな地域からご当地メニューを出してます。」
若畑 「こうやって振り返ってみるといろいろやってきたね。」編集 「ちなみに今までで一番の人気メニューというのは何ですか?」
若畑 「意外かもしれませんが、最もシンプルなのが一番人気ですよ。」
伊藤 「西京焼きですね。さわらの西京焼きと肉じゃがの極めてシンプルなご飯という感じですがおいしいって言っていただいて残食もゼロなんです。」
若畑 「そんなことから献立名も『最強の西京焼き定食』という名前なのです!」
編集 「しかし、お二人の要望を現実にする調理師さんは大変ですね…。」
若畑 「そうそう、後藤さんのことも話さなきゃね!」伊藤 「私たちの無理難題を形にしてくれるのが調理を担当している後藤シェフです。私たちのコンビ…というかトリオも4年目に入りました。最初のうちは『こんなのできないよー』ってことが多かったのですが、年とともにお互いにコミュニケーションが図れるようになってきて…。」
若畑 「今では念願だった手作りハンバーグや茶巾寿司も作ってもらえるようになりました。」
伊藤 「ハンバーグをタネから作ったり、寿司めしを茶巾に包んだりするのはすごく時間がかかるので、昼食提供時に間に合わせるのはスピードとチームワークが必要なんです。」
若畑 「そう考えると豊壽園の厨房はチームとしてレベルアップしたよね!…え?そろそろ時間?もっと話したい事があるんですけど…。」
伊藤 「ではお決まりですが、この仕事をしていて嬉しい瞬間は?っていう質問。聞かれてませんがお答えしますと…。私が嬉しかったのは、もうお亡くなりになりましたが、男性のご利用者様のT様とのやり取りなのですが、しばらくお休みになられて再利用された時のこと。私が『Tさん、またよろしくお願いします』ってご挨拶すると…
『おれは帰ってきた…』と言われて、『え?』って聞き返したら
『ここは…めしが…うまい…』とボソっと言われたのです。
普段はほとんど喋らない方だったのですごく嬉しかった。」
若畑 「へー、私も同じような体験なんですけど。主人の母と話をしていて介護事業所の話になったときに…『友美ちゃん知ってる?《ほうじゅえん》ってところのごはんがすごくおいしいらしいのよー』って。思わず心の中でガッツポーズしてしまいました。」

